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栄養士・メガネのネタ帳

セミナーやシンポジウムなどで収集した情報をアップします。興味は予防・健康増進、メディアバイアスです。

マスコミ向け「高齢者の低栄養予防」セミナー

 日本の社会保障制度を維持することを目的に平成25年度から始まった健康日本21(第二次)では、介護保険認定者を減らすために、「認知症」「ロコモティブシンドローム」「低栄養」を予防することが目標に掲げられています。このうち低栄養の予防についての最新知見を、専門家がマスコミ関係者に伝えるセミナーが開催されました。

 

「低栄養」の高齢者はそうでない人より死亡リスクが高い 

低栄養というのは、必要な栄養素が摂取できていない状態のことです。原因としては、咀嚼能力低下による食事量の減少や、加齢に伴う消化・吸収能力の低下などがあります。判定基準は調査する現場によって多少異なりますが、主にBMI20以下の「やせ」、血中のアルブミンというたんぱく質が4g/dl以下といった基準があります。厚生労働省の調べでは、現在65歳以上の10人に2~3人が低栄養の傾向にあるとされています。

この講演で東京都健康長寿医療センター研究所の新開省二副所長は、同研究所の調査結果などをもとに、高齢者の栄養状態と余命の関係について説明しました。6年間の追跡調査から抽出された「高齢者の健康長寿の要因」に①栄養、②体力、③社会活動――があり、このうち栄養について、さらに詳しく調べるため東京都と秋田県で8年間の追跡コホート調査を実施。その結果、長期的な栄養摂取状況の指標(①BMI、②血清アルブミン、③血清総コレステロール、④ヘモグロビン)はいずれも、低いと死亡の危険度が上がり、もともとの健康状態など副次的要因を除いても、この結果に変化はなかったといいます。他の研究結果とも照らし合わせたうえで「一般的な高齢者において低栄養状態は余命と健康余命のリスク要因である」と説明しました。

 

どんな栄養をとればよいのか 

新開氏は、高齢者の低栄養の背景には少食傾向(エネルギー不足)、たんぱく質(特に動物性)不足、脂質不足、鉄分の不足があると指摘。「食品摂取の多様性スコア」(DVS)を使った調査で、DVSスコアが高いほど、▽除脂肪量が高い、▽握力が強い、▽歩行速度が速い、▽貧血が少ない――傾向があるという結果を示し、「日常的に多様な食品をとることと筋肉量や体力には関連がある」と説明しました。DVSとは、①肉、②魚介、③卵、④大豆・大豆製品、⑤牛乳・乳製品、⑥緑黄色野菜、⑦海藻、⑧いも、⑨果物、⓾油を使った料理――の10項目について、毎日とっているかを点数化して評価する指標です。

 

「牛乳がオススメ」は血管性認知症に証拠あり 

後半では、九州大学大学院医学研究院の二宮利治教教授が講演しました。自身が中心的メンバーを務めた “久山町研究”の結果をもとに、認知症の時代的変化などについて話しました。久山町研究とは、福岡県久山町の住民を約50年にわたり追跡した大規模疫学調査。直接の死亡原因になりにくいため調査が難しい認知症について、戸別訪問を行うなどして6~7年ごとの断面調査を実施しました。

同研究の結果で、認知症の有病率は、1985年の6.7%から2012年までには17.9%まで増加しており、内訳ではアルツハイマー認知症の増加がその他のタイプの認知症に比べ突出しています。糖尿病患者のアルツハイマー認知症リスクは正常な人の2倍高く、認知症増加の背景に糖尿病患者の増加があることも示唆されています。

認知症発症と食事パターンの関係を見た分析で、二宮氏は牛乳・乳製品の摂取レベルに着目。同研究の分析結果から「牛乳・乳製品中の乳たんぱく質、カルシウム、マグネシウム認知症予防に寄与している可能性がある」とし、認知症の予防に「100~200mlの牛乳を毎日飲むことが有効かも」と話しました。

講演で示されたデータでは、牛乳・乳製品を1日97~197g摂る人は、摂取量がそれ以上やそれ以下の群のなかで最も認知症発症リスクは低くなっていました。内訳としてアルツハイマー認知症には摂取レベルと有意な関連は見られませんでした(相対危険0.68、信頼区間0.45~1.03)が、血管性認知症では摂取レベルとの関連があるという結果でした(同0.57、0.30~0.98)。カルシウムやマグネシウムの摂取レベルは多いほど血管性認知症の発症は低くなる傾向が見られましたが、アルツハイマー病と牛乳・乳製品摂取レベルとの関連は明確ではないようでした。

 

(・_・)メガネの目(・_・) 

認知症に関する後半の内容については、研究で牛乳などとの関連が見られたのは、増加が深刻なアルツハイマー型ではなく、血管性認知症ということでした。同じ“認知症”でもそれぞれ病態が違うことを考えると、認知症の種類に注意して結果を見る必要があると思います。

講演では「低栄養→認知症」という関係については明言されていませんでした。一般的に、低栄養が認知症の発症にかかわる“可能性がある”とされていますが、現時点で低栄養が発症の直接的な原因とは言えません。

2人の識者の方のお話から私がわかったことは「低栄養対策には多様な食品をとるのがよい」ことと「(血管性)認知症予防には牛乳がよい」ということでした。牛乳はたんぱく質やミネラルが豊富だし、身近で手に入れやすい食品なので高齢者の低栄養予防に期待の食品であることは間違いない、ということを前提にした内容ですが、タイトルから期待するような「低栄養に牛乳がよい」という明確な根拠はよくわからなかったというのが本音。

 

----- 開催情報 -----

【タイトル】
高齢者の低栄養問題その予防と有効な対策
―高齢者の」「低栄養」予防対策としての牛乳・乳製品の可能性―

【日時】
2016年3月30日

【場所】
丸ビルホール(東京都)

【講演者】
東京都健康長寿医療センター研究所 新開省二副所長
九州大学大学院医学研究院 二宮利治教授

【主催】
健康日本21推進フォーラム

【対象】
マスコミ関係者